みやすのんき先生 4冊目は、画像豊富なフォーム教本!
ついに出ました!「ひいこら」からの4冊目!今回は前著3冊の文字中心の構成から画像中心となり、ランニングフォームのポイントを1項目ごとに見開き(2ページ)で解説してあります。この本だけ読んでも大変勉強になりますが、やはり前著を読んでからのほうが理解が早いかなと思います。
一般のランニング教本との大きな違いは、やはり一項目ごとに見開きになっていることです。項目ごとに画像でポイントを確認しイメージできるので頭ではとても理解しやすくなってます。が、60項目は多いですよね。そこで、自分に向けてのリマインドのために20項目に絞ってみました。
それでも、走りながら20ものポイントを意識しながら走るのは不可能です。一つずつ無意識にできるレベル(習慣)まで落とし込んでいくしかないのでしょう。でも多分、一つのポイントを自然にできるように身につけた時点で、他のポイントもおのずと身についている可能性は高いと思います。ただ、複数のポイントを頭で理解(認識)していないと、「あ、あれはこういうことなのか!」ということ自体に実践しているときに気づかないので、やはり一通り読み通してみるほうが効率が良いでしょう。
ちなみに心理学では(具体的にはアドラー心理学には)、新しい習慣を身につけるには3つのパターンがあるといいます。それは、
- わかる→できる→身につく
- 決断→実行→継続
- 無自覚的器用さ→自覚的不器用さ→自覚的器用さ
の3つです。1と2は一般語で理解しやすいと思いますが、3はちょっと専門用語ですよね。しかし、ランニングフォーム改善に置き換えてみると、「なるほどなっ!」と腹に落ちました。
- 無自覚的器用さ⇒ランニングを始める前からの、フォームを意識していない走り。「ランニングって単純に走ることでしょ」、という段階。
- 自覚的不器用さ⇒ランニングフォームを改善しようと意識しての走り。意識しすぎるので冗長的でどこかぎこちないと思いつつ、今までと違うフォームで、今まで意識しなかったインナーマッスルを使って走る段階。
- 自覚的器用さ⇒冗長的な動きが自分なりに調整されて身についた走り。力が抜けているリラックスしたフォームでの走り。見ていて美しいフォームで走れる段階。
トレーニング理論ではないものの、このアドラー心理学って実践的な心理学ですよね!
さて、話がそれてしまいましたが、以下、20項目分のポイントの引用です。
02:フォームが悪いと筋出力を意識する意味がない
- 使う筋肉はフォームによって変わる!
⇒お尻を作用線から外す
まずは、姿勢が大事ということです。
09:着地は重心真下ではなくちょっと先
- まず最初は、ストライドを縮めて重心の真下を意識してみよう
- 前方への着地はスピードが出てから
一番地面の反力を受け取れる着地点を探しましょう。身体の芯がしっかりしている場合、頭まで突き抜けるような反力を感じるようになります。
10:シザーズドリルの意識を常に持つ
- 実際の走りでは着地で重心が乗った時に追い越す
11:足は振り子運動ではなく上から回す
速い人は離地した足を半円を描くように、引き上げて前に戻すイメージを持って走っています。しかし、力を入れて膝を上げるのではありません。力を抜けているから前に素早く戻されるのです。
これにより腸腰筋にスイッチが入り、お尻に踵が近づくくらい膝下が大きく跳ね上がるようになります。
ここは、個人的にはイメージトレーニング上の重要ポイントです! 「半円を描く」というイメージは自分にはとてもしっくりときました。マンガみたいに脚がクルクル回るのではなく半円起動を描くところが。
14:スピードを上げていくと走る感覚は変わる…
スピードが上がっていって足の回転が速くなると同時に地面の反力が大きくなり、足の動きも大きくなっていきます。それにともない地面に対して押す感覚は消失し、足は地面を瞬間的にタッチするような感覚になっていきます。
21:足裏はまっすぐ着地し離地する意識を持つ
・足の外旋・内旋は骨盤の動きと連動する
大切なのは骨盤から足は振り出されているということです。ゆえに骨盤の動きに合わせて足は外旋、内旋を繰り返します。
膝が一番前に行ったあたりが外旋から内旋への切り替わりのポイント。骨盤の左右のラインがそのタイミングで切り替わるからです。
22:着地手前の振り戻し動作が大切
・振り戻し動作が着地衝撃を弱めてくれる大きな助けになる
下り坂こそ上から回す意識を持ちましょう
この「振り戻し動作」ですが、YouTubeでケニア人の着地の仕方をスローモーション撮影したものを見るとよく分かります。
25:着地時に素早く脛(スネ)を前傾させる
・脛が前傾した走り→無駄のない走りに
無駄なジャンプ動作がなくなり、水平方向に足が回転して上下動が抑えられる。
この「脛の前傾」も重要ポイントです!前傾というと、姿勢や骨盤などはよくランニングフォーム教本に指摘される点ですが、脛について指摘している教本はないと思います。この「脛の前傾」を意識すると、ポイント51の身体の「くの字」が自然とできるようになります。
27:膝が不安定なランナーは外に張る
・筋トレの時に膝が安定するのは外に張った時
筋トレ種目のスクワットは、足を伸ばす時に足首の向きと同じ方向に膝を外に張る事によって膝が安定します。
このポイントは、ランニング時に意識することというよりは、トレーニング時やアクティブストレッチ時の静止している状態で意識すべき点となります。走っているときに意識しすぎるとガニ股走りになってしまうでしょう。
28:足を後ろ向きに伸ばす意識は不必要
正しいランニングの感覚は、着地した衝撃で膝が曲がった状態のまま、後ろに流れようとする足に抗い前に戻す意識のみです。つまり膝は走っている全局面で一切、後ろに向かわせるイメージは持つべきではありません。
41:股関節のスイング速度と足のスイング速度を近づける
・角度の変わらない足をスムーズに回していく
足を回すのは股関節であって、膝や足首ではありません。大きな股関節筋群から始動し、末端部の脱力によって高いスピードを獲得できるのです。
42:高く跳んではいけない。腰低意識とは?
ケニア人は、水平方向に大きく足をひろげてダイナミックに走っています。鍵となるのは骨盤の水平方向への動き。前に押し出すことを意識して走ってみましょう。
45:腕振りは上半身に壁を作る
上半身より前には肘が出ていない、上半身より前に肘が出てはダメ
46:肩は腕振りの支点だからグイグイ動かしてはいけない
動くべきは鎖骨や肩甲骨からなる上肢帯です。
48:腕振りは回旋するのが自然
・肩甲骨の構造上、腕は縦振りになるはずがない
腕振りで肩甲骨は内転と外転を繰り返しています。
この45,46,48は、腕振りの最重要ポイントです。特に48の「回旋、肩甲骨の内転外転」はやはり、他の教本ではあまり書いてない点だと思います。しかし、多分、肩甲骨周りがある程度柔軟にならないと、この感覚は得られないでしょう。よって、この感覚が分かりづらい人は、まずは肩甲骨周りをほぐすことから取り組みましょう(肘を回す、四つん這いになって肩甲骨を動かすなど)。
51:着地衝撃で身体が「く」の字になるのは自然
・地面の反力は「く」の字になることで利用できる
ボールが地面で弾む時には、1回ボールそのものが歪みます。それと同じように60%が水分でできている人間の身体は1回クッションを利かせて、柔らかくタメを作って弾むことで地面の反力を有効利用できる自然な推進システムを身につけているのです。
この「くの字」は着地時の姿勢のイメージとして超重要ポイントです!自分も走るときに心掛けているランニング時の姿勢として、前傾とか後傾とかよりも優先順位としては「くの字」ができているかを意識するようにしていました。教本によっては「S字」としている場合もありますが、同様なことを言っています。
56:骨盤は固めないがグニャグニャもNG
・「骨盤が動く」→「足が地面から離れる」が正しい順番
この「骨盤からの起動」も超重要ですが、肩甲骨の意識と同様に、骨盤周りの柔軟性がないと分かりづらく、骨盤全体で動かそうとしてしまうかもしれません。骨盤周りがほぐれていると、骨盤をある程度、分解して意識することができ(左右の腸骨と中央の仙骨を別個に意識できる)、例えば右足が接地したときに右側の腸骨(骨盤の右側)から動作を起動させることを意識できます。よって骨盤がほぐれていることが前提条件となります。骨盤や肩甲骨をほぐすには他記事を参考にしてください。例えば↓
57:ケニア人選手は背骨の動きでリズムをとっている
58:背中周りの若さを保つのが大切
ランニングを長く楽しむには背中周り・股関節の柔軟性を保つことが大切です。日頃から可動域をひろげるようにアクティブストレッチを行いましょう。背中周りが固い人も、腕を回して肩甲骨周りを動かすことで、少しずつほぐれていきます。
普段からのストレッチや、日常生活の中での姿勢の意識が重要です!背中周りや股関節をほぐすのに胸郭(きょうかく)がポイントという興味深い本の記事は↓
60:軸がブレない走りを目指す
・走りはダイナミックに、動きはコンパクトに
ここでは、「軸」と言っていますが、地面からの反力をもらうときの表現では、「芯」と言っていました。自分には「芯」と聞いて、なるほど!と感じました。というのは、「軸」という言葉でフォームを意識すると、軸を中心とした回転を連想しがちですが、「芯」という言葉で意識すると身体の各部に点在し状態が変化することも想像しやすいからです。例えば、膝、腰部、背中、頸部に、着地するときに「芯」が瞬間的に固くなるというイメージ(筋肉で固めずに靭帯で固めるということと理解しています)です。
人前で話しをするときに「3つのポイント」など、項目を3つに絞ると注目しやすく記憶に残りやすいといいます。本編ではランニングフォームのポイントを60も挙げているためか、最後の章(あとがき)で3つのポイントに絞り込んでいます。
あとがき
1) 末端部分を意識しずぎない。股関節から足を動かすようにする事。大切なのは上肢帯と骨盤からなるブレない身体の軸と股関節筋群の動き。
2) 末端部分を意識しすぎてはいけないが、接地と離地の丁寧さはマラソンで大事。着地で地面の反力を足裏全体で素直にもらい、ふくらはぎの筋腱スティフネスを使って推進力に繋げていく。離地で膝や足首で蹴るのは無駄でしかない。
3) たえずリラックスを心掛け、走る効率を意識する。マラソンの後半、疲れた時こそ頑張らないで、ピッチを維持してフォームの修正のみ意識する。力みは筋肉の硬直を生む。すなわち身体の巧緻性と俊敏性を奪ってしまい、ランニングエコノミーの低下につながる。
さらに上記のポイントを名詞化すると、
- 股関節からの起動と身体各部の芯
- 接地と離地の丁寧さ(正確さ)
- 絶えず意識すべきはリラックスとピッチ維持
でしょうか。
ランニングフォームを改善しようというランナーの座右の銘ともいえる本です!
誰も教えてくれなかったマラソンフォームの基本 遅く走り始めた人ほど大切な60のコツ