ランニング フォーム 改善! 股関節と肩甲骨を動かそう!

ランニングフォームの改善に役立つ教本や関連本を紹介、フォームを進化させて走力を上げましょう!

身体操作教本: 「究極の身体」 高岡英夫 著

ランニングフォーム改善に役立つ、身体の深部の使い方のバイブル!

 

 この本に出合ったのは、「股関節がみるみるゆるむすごい腰割り体操」で紹介されていたのがきっかけです。そもそも、「股関節がみるみるゆるむ・・・」もふらっと寄ったブックストアで、文庫本の積まれた新刊のコーナーを見ていた時に「股関節」のキーワードが気になって買った本でした。ランニングフォーム改善が気になっていれば、自然と「股関節」のキーワードが目に入るのかもしれません。が、この本の「究極の身体」は読んでみれば、なるほどなタイトルですが、ランニングに関連するキーワードとしては目に入ってこないタイトルでしょう。
 でも、読んでみてビックリ!これこそがランニングフォーム改善の参考書として究極の内容だったのです!もちろん、この本自体はランニングフォームについて直接触れられているわけではありません。タイトル通りの内容であり、その「究極の身体」を持っているトップアスリートとしてちょくちょく登場するのは、イチローやマイケルジョーダン、タイガーウッズです(唯一、高橋尚子の腕振りが登場しますが他のアスリートに比べて取り上げ方は小さいです)。それでも、他のランニング本を読んで、ランニングフォーム改善について日ごろから取り組んでいるランナーであれば、この「究極の身体」を読めば、腑に落ちる点が多いはずです。
 それでは、その「究極の身体」とは何ぞやということですが、序章の始まりで以下のように定義されています。

 

 

究極の身体⇒  四足動物、あるいは魚類の構造までをもみごとに利用しきることで生まれるもの。

ハイハイ魚類の進み方⇒ ハイハイする赤ちゃんは、人間の中に棲んでいる魚類性をみごとに使いこなしている。この本来誰の身体にも備わっている魚類性を開発、維持しているのが「究極の身体」だ。

  たしかに、赤ちゃんや小さい子供は体がやわらかいというが、その理由は筋肉が発達していなく、間接を分化して使えているからなのだということが認識できました。大人はその後の成長過程で筋力の発達とともに関節を無意識に固めてしまっていたのですね。

 序章と第1章で「究極の身体」の定義と身体の組織分化(骨格や関節の分化)を論じた次の章では、重心(重力の感じ方)について論じられる。ランニングでもよく重力を利用しろ(特にポーズランニングでは中心コンセプトとなる)と言われます。

 

人間が立って歩いたり、作業をしたり、静止するためには、必然的に地球の重力方向と身体に働いている重力の中心(重心)を感知していなければならない。・・・微妙な重心変化をとらえるためには、可能な限り脱力して立つということが必要不可欠になる。

 なるほど、重心を感知し、利用していくにはまず、身体を極力脱力させることがコツだということが認識できました。ただ、実践するにはさらにコツが必要です。
 自分の感覚では、足の開き方(やや足を外旋させる=つま先を外側向ける)、内くるぶしの下に荷重、骨盤を前傾させる(腰を引きやや尻を後ろに持ち上げる)などを意識してなるべく身体をリラックスさせる(姿勢をよくしようとして背骨を反らしたり緊張させない)と前腿(大腿四頭筋)も緊張させずに骨格で立てるようです。できる限り脱力して立つには文字通りコツ(骨)が必要なのです!

爬虫類⇒ 哺乳類よりもより魚類に近い爬虫類は、縦よりも横幅が広いX方向(前後)に扁平な胴体を持つことで手足がZ方向(左右)に広がり、魚類が持っていたY(上下)・Z(左右)方向の波動運動を四肢に伝えている。
四足動物⇒ 馬などの四足動物の胴体を正面から見ると、横が狭く縦が長い形をしている。これに合わせて手足がX方向に伸びたことでより地上生活に適した生物に進化した(X=前後・Y=上下方向の波動運動を主導に四肢を動かして走るようになった)。

 関節が分化して動かせるようになり、重心を感知できるようになった(脱力できるようになった)ら、次は 魚類や四足動物の動きを再現させるために波動運動の説明に入ります。この波動運動を意識するためには、その波動の方向として主に左右方向と前後方向の理解する必要があります。波動運動を発生させる脊椎の動きで分かりやすいのは、上記の爬虫類や馬の例もありますが、同じ水中の動物では、通常の魚は尾びれを横(左右方向)に振って泳ぐのに対して、イルカやクジラは尾びれを縦(上下方向)に振って泳ぎますよね。同じ水中で泳ぐにも、脊椎の波動運動の方向が明らかに違うことが分かります。

さて、人体では、X軸(前後軸)でもZ軸(左右軸)でも脊柱の波動運動が使われ、さらにそこにひねりや複雑なずれの加わった動きが可能だ。要するに人間は魚類に始まったあのY・Z方向の能力を引き継ぎながら、哺乳類の四足動物で発達したX・Y方向の両方の性質を受け継いでいると考えられる。

 人間は哺乳類ですが、水中での魚類とイルカ(哺乳類)の双方の脊椎の波動運動というハイブリッドな性質を有するとは驚きです!ただ、この動きを活用できているのは少数で、その者こそが「究極の身体」の持ち主だということです。

 次は、その波動運動を発生させるために必要な脊椎の理解です。下半身の運動での脊椎のポイントはもちろん、脊椎の下部である腰椎とその末端である仙骨になります。

股関節自体の位置がローテーション運動を起こす時、その運動が三次元の動きである以上、中心は両股関節の中心ではなく、その上の仙骨であり、さらに上の腰椎となる。

レギュラーの身体では、足は実際の股関節よりもさらに下の股下から始まる感覚だと思うが、究極の身体では股関節よりももっと上の腰椎の付近から足が生えているような動きになる。はたから観察すると、足が大腿骨から始まるのではなく、股関節のさらに上の腰の中から始まったように見える。足がそこまで深く入り込んだ状態を、私は「割腰」と呼んでいる。

  仙骨ってすごく意識しづらい骨なので、仙骨を意識するというよりは、腸骨(骨盤の一番大きな骨なので意識しやすいですよね)を意識し、その腸骨と仙骨をつないでいる仙腸関節を次に意識すると仙骨を意識することができると思います。

 また、もちろん地面との接点である足裏感覚も重要ですね。

足裏の脛骨直下のポジションがわかって、身体的にも足裏の正しい「中心」が、ある程度使えるようになってくると、突然股関節が正しく意識できるようになるのだ。

  特にランナーに多いと思いますが、フォアフォト着地やミドルフット着地を意識するあまり踵に荷重すること自体を良しとしない傾向があると思います。確かに接地する際に踵から着地するのはブレーキ作用を生むのでランニングにとってマイナス作用となりますが、踵を接地することや踵に荷重することとは区別しなくてはならないのです。というよりもランニングの場合は、足のどの部分から接地するは、理想的なフォームでは重心の前後のどの位置で着地するかで決まるので、その意識のほうがよっぽど重要なのです。NGは重心より前、身体より前方で着地してしまうことであり、その場合、自然と踵からの着地となっているはずです。
 着地は基本的には身体の真下(重心線)に足をただ単に下ろして、踵に近いくるぶしの真下部分に重心を乗せて地面から反力をもらって持ち上げるのです。つま先に重心を乗せると地面を蹴ってしまい、マラソンのような長距離走にはNGな動作となります。イメージとしては下記の表現でしょう。

フロント抜重・リア荷重の踵支持は、クルマにたとえると急発進時のフロントリフト・リアスクゥート状態。反対にフロント荷重・リア抜重の母指球支持は急ブレーキの状態。どちらが前進に適しているかは言うまでもない。

 進行方向への波動運動を発生させるための意識として、次の立甲腕一致というのはとても参考になります。ランニングの場合は、このことを意識すること(腕と肩甲骨が直線上になること)で腕の動き(厳密には肘の動き)と肩甲骨の動きが連動します。

人間がX方向への「立甲腕一致」を行うためには、まず身体の意識として「立甲腕一致」を形成し、「立甲腕一致」を邪魔している筋肉を脱力させることだ。そうすれば「四足動物」のように、腕と肩甲骨が一つの平面になることによる強い力に耐え得るフォルムが生まれ、ローリング運動による力強さとスピードが我がものになる。

  下半身に関しても「立甲腕一致」が生み出す軌道は参考になりますが、その動作に関しては次のように、脊椎から発生させる魚類的動作を活用することが重要でしょう。

大腰筋はもともとが脊椎系の筋肉なので、魚類が持っている脊椎主導の柔らかい鎖状の波動運動に対応して活動する性質を持っている。

 

割腰が進み、胸・腰椎から始まる2本の大腰筋と、大腰筋がつながっている左右の足をのように使う(持ち手大腰筋の根本=胸椎・腰椎。されにこれら2本の鞭で、交互に地面を打つ(歩く)ことができれば、それは魚類の運動よりもはるかにハイレベルな運動となる。

  これらの魚類的動作を生み出すには、「甲腕一致」が筋肉を脱力させることで可能になるのと同様に、無駄な力が入っていないことが条件となります。

つまり大腰筋が足を吊る働きをし、大腰筋によって足が下に垂れているという状況になった時に初めて、センターという意識が身体の中心になるヘソの少し上から股の高さの所に生まれる、という考え方だ。結果として、大腿四頭筋や中殿筋、腰背筋といった拘束性の強い筋肉群が解放されて、それらの開放された筋肉は、大腰筋の動きにリードされて動く大腰筋主導系の関係に変化する。それが究極の身体の状態なのだ。この大腰筋によってリードされている点が極めて重要なのだ。

  上記のように「大腰筋が足を吊る」には重心がその上方にないといけません。よくランニングフォームで重心がみぞおちや胸など上方にあることが良いとされますが、理由はこの身体動作のためだとわかると納得です。

 身体の中心軸に沿って、右半身を「右側体」、左半身を「左側体」と言う。左右の側体の境界線は、中心軸を含む場合と、含まない場合があるので「側体」は全部で4パターン存在する

  この側体という概念は、体幹の使い方を柔軟にするのに重要でしょう。いわゆる体幹を一つのかたまり(長方形の箱のようなイメージ)としてしか捉えていなかった場合、この側体をイメージできると立体的に体幹を動かすことが可能になると思います。

捌きと入り身:相手の攻撃を捌くと同時に反撃に転じるために、レギュラーの身体では体軸を中心にした軸回転運動を用いるが、達人は割体を使った側体の前後のずれ運動を利用する。

 捌き(さばき)と入り身は、ランニングにおいては、身体を無駄にひねらないことを理解するのに役にたちます。
 しかし、この身体の使い方は格闘技、特にボクシングを観ているとわかりやすいでしょう。井上尚弥やマイクタイソンのパンチの出し方やパンチ力の源はこの身体の使い方(側体の活用)があるのだなと思います。身体の軸から回転させてパンチを繰り出せば、その動きがわかりやすくなるばかりでなく、パワーもないでしょう。
 最近(2018年1月)では、亀田京之介(亀田兄弟のいとこ)のプロデビュー戦で対戦し、勝利した木元紳之助というボクサーの身体の使い方が、この側体を使っているなと思いました。試合直前のレフリーの両者への説明前にやたらに肩甲骨を柔軟に動かしているのが見えましたし、結果の解説で「ノーモーションで出す左ストレートが度々ヒット」とのコメントからも側体を使っていることが伺えます。

 

胸骨側は、肋骨下部の遊離肋骨はずらせるとしても、胸骨とつながっている部分をずらすことは容易なことではない。実際、割体を作るべく段階的に科学的トレーニングに取り組んでいくと、必ずこの胸骨側がデッドロックになってくる。つまり、胸骨まわりが動かないために、結局背骨側も動かせないのだ。
しかし、肋骨と胸骨がつながっている部分は本来軟骨で、胸肋(きょうろく)軟骨と呼ばれている。赤ちゃんの胸などを触ってみれば、非常に柔らかい軟骨であることがすぐにわかると思う。ところが成長の過程でそこがどんどん固まっていってしまうのだ。つまり硬骨化するというわけだ。だからこの部分を軟骨化させて動かすことが、割体を得る一つの条件となってくる。

 上記の胸骨の柔軟性は、やはりボクシングになりますが、マイクタイソンの特徴的なパンチの繰り出し方(フックやアッパー)を見ていると、その他のボクサーよりも相当胸骨の軟骨が柔らかいのだなと思います。まあ、タイソンの場合はパワーもすごいのですが。

すでに何度も説明してきたとおり、「センター」というのは脊椎波動運動を保障するものであり、さらには体幹部のずれを高度に利用した割体などを保障する、極限的な身体の柔らかさと対応しているものなのだ。だから、ただの一直線の意識ではなく、実に柔らかい一直線なのだ。ここが非常に重要だ。

  この「柔らかい一直線」というセンターの表現も脊椎を柔軟に動かすためには必要なイメージです。もし「固い一直線」のセンターのイメージを持ってしまうと、その軸を中心に身体をひねる動作を多くなり場合によっては無駄な動作を生むからです。特に長距離ランニングに関しては要注意です。

人間の場合、普段の生活では基本的な四肢主導系の理論に従った姿勢をとるので、軽微な作業では甲腕交差の形になる。しかし究極の身体の持ち主が、専門的な動きをしようとした時には、必要に応じて胸がスーッと閉じて、四足動物のようなやわらかい谷底状の胸に変化する。この谷底状の胸を谷胸と呼ぶ。

  なんか、「谷胸」って女性には嫌な響きだと思いますが、胸を張ることが良い姿勢の条件と思ってしまうことが多い中で、上半身を脱力するのには効果的なイメージだと思います。

 下半身のポイントは、なんといっても仙腸関節だ。仙骨のところで腸骨が左右に割れることで、上半身の甲腕一致と同じように、仙骨に対し腸骨がX軸の正方向にわずかだが前方化していけるのだ。腸骨がわずかに動くことで大腿骨のつけ根の位置が、若干ではあるが内側に向く
この場合、大腿骨のつけ根が内側に向くと言っても、内側方向に力で締めつけられて閉じるのではなく、仙腸関節が割れて左右の腸骨が前方に向かって垂れるような運動だ。そうすると大腿骨のつけ根で股関節に向かっている大腿骨頸が、若干内側を向いてくる。このことによって足の運動が中心に集まりやすくなり、一点一線上で足と地球が力学的関係を結びやすくなるのだ。先に四足動物の足先と両肩を結んだラインは三角形になるという説明をしたが、まさに同じようなメカニズムが生まれるのだ。
この股関節の動き自体から生まれる足のトーイン(内股)化非常にわずかな角度だが、それが高いパフォーマンスを実現するのに大きな役割を果たす。
したがって本当に優れた身体運動家にはO脚の人はいないはずだ。また反対のX脚方向に力が入って閉じているのもマイナスでしかない。つまり身体の内側あるいは外側を緊張させて閉じたり開いたりするのではなく、可能な限り内外のすべてをゆるめてニュートラルにするのが重要なのだ。

  上記の下半身のポイントは重要ですが、前提として腸骨が左右に割れることが必要になります。股関節が固まっていると、このイメージができないので難しいのですが、とりあえず、脚の根本は大腿骨(大転子)ではなく、腸骨(腰の出っ張り部分)から始まっているとイメージすればいいでしょう。

フローティングしている肋骨:マイケル・ジョーダン肋骨は、糸に吊られた何枚もの5円玉のように、背骨でつながった12枚の輪(肋骨)がバランバランになってずれ動く状態にたとえられる。

  この本の最後では、マイケルジョーダンの身体動作の凄さが「究極の身体」の使い手として紹介されています。割体が縦方向の体幹の柔軟性を発揮するイメージだったのに対し、上記では体幹の横方向の柔軟性を発揮するイメージとなっています。要は、体幹は前後(X方向)にも、左右(Z方向)にも柔軟に使えること、立体的な柔軟性が「究極の身体」なのですね。

 

究極の身体 (講談社+α文庫) 高岡英夫著