ランニング フォーム 改善! マラソンを賢く楽に走ろう!

ランニングフォームの改善に役立つ教本や関連本を紹介、フォームを進化させて走力を上げましょう!

「新版 ゆっくり走れば速くなる」 浅井えり子 著

LSDカラダの器を大きくしよう!

 二つ前の記事で、同じようなタイトルの「マラソンはゆっくり走れば3時間を切れる!」という教本の紹介をしましたが、こちらのほうが元祖ということ、著者がオリンピアンということもあり、出版年は遡りますが読んでみました。
 やはり、「ゆっくり」走るだけでは速くならない点は前々回紹介の教本同様ですが、LSDのポジショニングが違っていて、前々回の教本では「疲労抜き」に主眼があったところを本書では「身体の器づくり」を基本としています。
 また、バラエティーに富んだ練習の仕方も紹介されていたり、初心者からサブスリーまでのレベル別のメニューの紹介があったりと指導者向けの教本ではなかろうかと思ってしまう豊富な内容です。
 マンネリ化しないためにもバラエティーに富んだ練習の必要性を謳ってはいますが、LSDに始まってLSDに終わるというところはあり、他の教本ではないLSDの深掘りがされているのはやはり自分にとっては新鮮でした!

 

 それでは、本書より自分に響いた箇所をシェアさせていただきます。

 

LSDとは何か? 「身体の器」を大きくするトレーニング 

・・・どのくらい「ゆっくり」かというと、私の場合は、1㎞7~8分というペースです。本当にゆっくりでしょう?そのペースで2時間以上走り続けます。
 そんなに「ゆっくり走る」のは、なぜでしょうか。
 まず、身体に長時間に渡って弱い刺激を与え続けることで、普段使われていない筋肉や神経が刺激されて使えるようになり、マラソン向きの身体を作ることに効果があります。また、ゆっくり走ることで、自分のフォームを修正することができます。バランスの悪いフォームではゆっくり長く走ることができないのです。マラソンは長い時間走り続ける競技ですから、身体のリラクゼーションがうまくでき、前へ進む以外の無駄な力を使わないようにすることが、とても大切です。言いかえれば、「ゆっくり走れない人は、速く走ることもできない」ということです。
 ・・・まず、ハードなトレーニングを受け入れられる『器』を作らなければなりません。LSDは身体の『器』を大きくすることができるトレーニングなのです。

  ポイントは、「無駄な力を使わずに、ゆっくり長く」ということですね。どうしても速く走ろうとするとどこかが力んでしまい長く走れないものです。身体の器ができていないうちにインターバル走などのスピード練習をしてもダメな理由がわかりました!

 

何㎞ではなく何時間走ったか

 では、どうすれば「ゆっくり長く」走れるのでしょうか。
 まず、何㎞走ったか、という距離の観念は捨てましょう。距離に気をとらわれていると、どうしても心理的にゆっくり走れなくなります。私はLSDのときには、練習日誌に距離は記入せず、何時間走ったか、時間だけ記入しています。できるなら、はっきり距離のわからないようなコースで走るのが望ましいくらいです。LSDでは何㎞走ったかではなく、何時間走ったか、という観点で取り組んでください。

  極端な話をすれば、その場で足踏みのように身体を動かしていてもいいのですね。長時間身体を動かす(脚を動かす)ことが必須ということがポイントなのでしょう。

 

スタミナのある身体作り

 身体の器を大きくしていくためには、強化としてとらえたLSDを取り入れる必要があります。この場合は、少し我慢して、なるべく長く走ります。私は3時間くらい走ります。もちろん、ゆっくりです。・・・
 極端な言い方をすれば、楽に走れている間はウォーミングアップと同じで、つらくなってからの時間がトレーニングなのです。私を例に上げれば、2時間半以上ウォーミングアップで残りの30分弱がトレーニング効果が現れる、ということになり、とても非効率な感じもしますが、それもまたLSDトレーニングの奥深さとおもしろさと感じています。・・・

  確かにLSDって時間的に効率的な練習とはいえないのでしょうけど、走力の器をつくるためと思って時間を割いていくしかなさそうですね。

 「走酔」が理想

 フォームをチェックする、身体と対話する、といっても、決してLSDの間、そのことばかり考える必要はありません。何も考えない「無」の状態で走ることも大切なのです。たとえばフォームのことを考え続けていると、かえってギクシャクして自然なフォームができなくなります。・・・何も考えずに走っているときに自然なフォームで走れるようでなければいけません。そのためにも「無心」で走る時間も必要なのです。何も考えないのは簡単なようですが、意外とできない人が多いようです。
 ・・・・・
 無になれる、それはまた集中力にもつながります。雑念や時間を忘れて、走ることだけに集中できる―そのときはきっと、リズムもテンポもバランスもよい感じで走っているはずです。自分にとってのランニング・ハイです。走ることに酔いしれるような感じなので、佐々木監督はそれを「走酔」と呼んでいました。そういう境地に達したら、走る楽しさをよりいっそう感じられるはずです。

 LSDは走力の器を大きくするとともに精神的な器も大きくしてくれるのでしょう。マラソン本番でもあれこれ考えているとネガティブ思考となったり、そもそも考えてしまうことによってエネルギーを消費してしまったりしまうことがあると思いますが、それを防ぐためにもLSDで「無」になる練習をすべきなのですね。目指すは「走酔」の領域というのも仙人みたいで修行増の気分になりそうです!

 

振り子とムチとハンマーの動き:一連の動きが、理想のランニングを生む

 振り子の原理を考えてみてください。振り子は、視点を基準とした棒が、外部から与えられた力で動きます。棒自体は振るための力を使っていません。振るというより振られています。・・・
 この振り子運動を、走ることに当てはめてイメージしてください。股関節から下の脚と、肩から先の腕の動きが中心になりますが、との一つ一つの支点から派生する振り子運動の集積が、ランニング運動となるのです。
 ・・・
 振り子の原理とともに、ムチの原理でも説明しましょう。
 ムチは持ち手の部分が太く、先が細くなっていて、柔らかい動きで力を伝えていきます。手元でさほど力を加えなくても、先の部分になるにつれてしなやかになり、先端は最も速いスピードで動くことができます。
 人間の身体でいえば、体幹部を起点にして、力を発し伝えます。体幹部に遠いほど、骨は細くなっていきます。・・・ムチのように下肢を使えば、小さな力でも、足先が地面を蹴るときのスピードを速くすることができるのです。
 ・・・ムチのような柔らかい動きをしながらも、地面を蹴る瞬間は接地面をハンマーのように硬くする必要があります。・・・自分の体重を支え、地面からの反発力を生かすためには、着地時に、ムチの動きから、一瞬のうちにハンマーのような硬い動きに変えなければならないのです。
 こういった一連の動き、振り子の動き=脱力、ムチの動き=しなやかさ、ハンマーの動き=硬さ、この3つの動きを意識することで、より効率のよい、理想のランニングにつながっていきます。

  さすが浅井えり子選手はランニングフォームのコツを主観的な表現で語ってくれます!無駄な力みを除く脱力(振り子)、体幹から脚を動かすためのしなやかさ(ムチ)、着地の瞬間にアキレス腱の剛性(ハンマー)を活用すること(だと思いますが)を誘導する主観的・描写的なイメージですよね!

 

「ゆっくり走れば速くなる」という逆説的なタイトルが浅井えり子選手という実績のある人の言葉によって説得力のある本署はやはり一読の価値アリです!

  

ゆっくり走れば速くなる