ランニング 独学! 教科書、フォーム、意識、考察 etc

ランニングフォームの改善に役立つ教本や関連本を紹介、フォームを進化させて走力を上げましょう!

ランナーに役立つ教養本 「アスリートは歳を取るほど強くなる」 ジェフ・ベルコビッチ 著、船越隆子 訳

現役で活躍する熟年アスリートの真実を知って勇気をもらおう!

  市民ランナーの中核を成す熟年ランナーであれば、この本のタイトルが目に入ったならば思わず手にとってしまうことでしょう。この本を読めば加齢に勝てる秘訣でも得られるのでは、と思わせるタイトルですよね!原題は「PLAY ON」で、直訳すると「(試合を)続ける」となり、意味的には「現役を続行する」というニュアンスだと思います。翻訳者は多くの熟年ランナーの心理をつく、絶妙なタイトルを付けたものです!

 さて本書の内容ですが、著者はアメリカのジャーナリストなので本書内で登場するのは、アメリカで活躍する人たちとなります。第1章ではプロのマラソンランナーが登場し、他にアメフト、サッカー、アイスホッケー、自転車、バスケットボール、テニスなどのプロ選手やオリンピックで活躍するアスリートが登場します。また彼ら彼女らを指導する監督やコーチ、彼ら彼女らが取り組むトレーニングの開発者、加齢に対抗する研究所を立ち上げるシリコンバレーの重鎮なども登場し、バラエティーに富んだ人たちのインタビューで満載です。そして本自体もボリュームがあり分厚いので興味のある章だけ集中して読んで、そうでないところは読み流すのがおススメです。

 

 より具体的な内容が気になると思いますので、とりあえず各章のタイトルを紹介します。↓

 

はじめに:生涯アスリート時代の幕開け

1:熟年アスリートの身体も進化し続ける

2:最も疲労を溜めない者こそがプロ

3:異なるトレーニングの組み合わせで得られる効果

4:脳をだましてトレーニングの効率化を図る

5:身体の「癖」を科学して怪我を減らす

6:遺伝子的要因は肉体の運命を決めるのか?

7:精神の落ち着きとともに増す安定性

8:試合の速度を決めるのは身体ではなく心

9:選手寿命を延ばす栄養学のリアル

10:熟年アスリートが求める運動後の回復メソッド

11:スポーツ寿命の極限ー「修復」「取り替え」「若返り」

おわりに:僕にとってのスポーツ人生とは

  マラソンランナーが登場するのは第1章のみですが、他の章もタイトルを見ると気になるものが多いと思います。市民ランナーとしては、上記タイトルがすべてランナーをもとにしたもの(ランナーのトレーニングや研究の被験者がランナー)であったりすればより実用的になりますが、そこは残念ながら?違います。上記にもあるように、マラソンのような持久力中心のスポーツ以外のアスリートが多く登場します。逆にそれが驚きです。

 

 それでは、本文より気になったところを抜粋し紹介させていただきます。

 

1:「熟年アスリートの身体も進化し続ける」より

・・・生物学者たちは、そのメカニズムのすべてを解明したわけではなかったが、こうしたミトコンドリアの遺伝子の発現方法 ― つまり、DNAから遺伝子情報を転写して新しいタンパク質の生産に置き換える方法 ー に関する何かが、細胞の死や老化の中心的な役割をしていることを発見した。研究者たちは、14人の高齢者に、半年間の運動プログラムを実行させて、その前後で筋肉の生体組織検査を行った。どのようなタンパク質が作られているのか、また、そのタンパク質がもともとの筋肉細胞と比較してどのように違うのかが突き止められた。彼らは論文にこう記した ― 「運動トレーニングをした後では、転写機能の老化の特徴は、年齢と運動の両方によって影響を受けているほとんどの遺伝子において、若者のレベルにまで一気に戻った」。他の科学者たちも、運動によってつくられたタンパク質と、アルツハイマー病やアテローム性動脈硬化症のような加齢による病気のリスクの低下を関連づけている。つまり、基本的な生化学的レベルにおいては、運動が若さを回復させるということである。

  市民ランナーって実年齢よりも若くみえる人が多いなぁと思ってましたが、それにはちゃんとした生物学的な根拠があったんですね!まぁ、上記には「運動」とあるので市民ランナーに限っていませんが、おおよそ中年以降にプロではなく習慣的に運動している人の人口的多数は市民ランナーになるとは思います。

 

 僕たちの身体が運動にどのように反応するかを知れば知るほど、かつては害があるかもしれないと考えられていた部分も含めて、どれほど運動が有益であるかがわかってくる。かつては運動のマイナス面と考えられていたことが、実はマイナスではなかったのだ。長い間走るのは心臓や肺の健康には良いが、膝の軟骨には悪影響を与えると、当然のように考えられていた。だから、40歳を過ぎた人たちにとっては水泳やサイクリングのような身体に衝撃を与えにくい選択肢が良いとされてきたのだ。けれどもここ数年の研究で、それとは正反対のものをよしとする証拠が次々に示されてきている。軟骨に一定のパターンで繰り返し力を加えると軟骨組織が刺激され、軟骨の形成が促進されることがわかってきた。ランニングもそうした運動であり、サイクル負荷と呼ばれる。・・・たとえ走る人のほうが細身な傾向があるという事実を差し引いたとしても、走らない人より日常的に走っている人のほうが膝変形関節症の発生率が低い理由は、サイクル負荷によって説明できるだろう。

 上記にある通り、いまだに医学的根拠があるように膝に負担がかかるから突然走るのは良くないのでジムでのバイクやプールでのウォーキングなどが体にいいと思っている人も多いように思います。確かに自分の場合も40歳近くになり運動不足を自覚し走り始めたときに1キロも走れずに膝を痛め松葉杖を使うハメになりましたが、膝そのものの関節を痛めたわけではなく、走り方が悪く、膝回りを通るじん帯が炎症を起こした(腸脛靭帯炎)のでした。今は理解できますが、当時は「やはり突然走ると膝に悪い」と思い込んでいました…。

 

2:「最も疲労を溜めない者こそがプロ」より
  • 過剰なトレーニングは過ちである
  • 練習量を減らすと選手が好調に
  • 最小のトレーニングで最大の効果を
  • なぜ人はハード・トレーニングを称賛してしまうのか?

 この章では、本文を抜粋すると長くなってしまうので小見出しを引用します。プロのアスリートの場合、一般人が趣味でスポーツをするのと違ってトレーニング自体が仕事の一部となるので自ずとハードになってしまうところをどのように疲労を抜くか、効率的なトレーニングをするかが結果を出すポイントにもなるということです。特に最後の小見出しのハードトレーニングを称賛する傾向は日本でもありますよね。ゴールドメダリスト野口みずきさんの名言「走った距離は裏切らない」を称賛してしまうのもその一つでしょう。一般的には月間走行距離が長いほど走力は上がるとは思いますが、故障してしまうリスクもあり、走った距離に裏切られる場合もあるのでしょう…。

 

 4:「脳をだましてトレーニングの効率かを図る」より

 僕がいま試したのは「加圧トレーニング」だ。日本のエクササイズ研究者の佐藤義昭が発明し、50年以上かけて技術を向上させてきたものの最新バージョンである。日本の野球選手やアメリカのボディビルダーは、加圧トレーニング ― あるいは総称として、血流制限とか、オクルージョン・トレーニングとも呼ばれる ― を何年も行ってきたが、その適用の安全性や効果が標準化する新しいハードウェアのおかげもあり、ようやくプロスポーツの主流に参入しつつあるところだ。・・・

・・・さらには、手術後の患者や高齢者といったウェイトを持ち上げる強度の負荷に耐えられない人たちでもまた、筋肉組織を維持したり作ったりできるということだ。・・・

 アメリカでは加圧トレーニングは、プロスポーツうやオリンピックの種目以外にでも、早くに目をとめたいくつかの組織が導入している。その1つはであり、60セット以上を2000~5000ドルで購入し、統合特殊作戦司令部の各支部で使用している。・・・

 NASAもまたKaatsu社のトレーニングツールを数セット購入した。おそらく次の10年のうちには実現するであろう初の火星までの有人飛行計画に間に合うよう、宇宙飛行士が、宇宙でなるべく長く健康をキープできるより良い方法を探しているのだろう。無重力では、人の筋肉量と骨密度はあっという間に落ち、循環系の働きが悪くなる。

  加圧トレーニングの教室を街で見かけることがあったのですが、日本で開発されたトレーニング理論だとは知りませんでした。ネットでググってみると通える距離(東京都台東区上野周辺)に3件ヒットしました。それぞれの教室のウェブサイトを覗いてみるとジムというよりは整体の治療院のような雰囲気ですね。本書でも触れられていますが、宇宙のような特殊な環境(無重力)や術後のリハビリなどではとても有効なトレーニング法だと思います。一般人はやはり普通にジムで運動したりウォーキング、ランニングして体力を維持するほうがいいとは思いますが、超高齢化(そのうちどうしても筋力低下…)が進む昨今では、知っておいて損はありませんね。

 

5:「身体の『癖』を科学して怪我を減らす」より

・・・問題のある部位の動きが制限されている今の状態は、サイドブレーキをかけたままで走っている車のようなものだからだそうだ。「アスリートのゴールは、できうるかぎり効率よくすることであるべきであり、つまりは、最小限のエネルギーを使って、最大限の成果を得るということなんです」と、彼は説明した。
・・・筋肉機能の低下は、ゆっくりにすることはできるが止めることはできず、ハードにトレーニングをして防ごうとしても、歳を取った筋肉はトレーニングの合間の休養もより多く必要になるから、それもまた難しい。一方で、動作に起こった不具合は、解決しやすい問題である。ウェイトを増やしてスクワットをするよりも、ふくらはぎや足首のストレッチをするほうがずっと少ないがんばりですむし、したあとのリカバリーの必要もない上に、同じだけの機能回復効果が得られる。あらゆるアスリート、特に年長のアスリートにとっては、より速くより強くなるための最短の道は、すでに持っているが、使えていなかったスピードと強さを利用することかもしれない。

  上記の抜粋は特にランナーについて語っているわけではないけど、当てはまる部分が多いですよね!余計な力みがあったり、着地のタイミングが悪かったりすると「サイドブレーキをかけたままで走っている車」という表現がぴったりと当てはまります。

 

8:「試合の速度を決めるのは身体ではなく心」より

「ゆっくりすればスムーズで、スムーズにいけば速くなる(Slow is smooh and smooth is fast) ― この言葉は、アメリカの特殊部隊工作員全員の頭に叩き込まれている。・・・SEALは射撃の訓練をする際に、ほとんどスローモーション映像の中か、水の中で動いているように見えるくらいにゆっくりと動く練習をする・・・無駄玉は弾薬を消耗するだけでなく、敵に自分の位置を知らせてしまうことにもなる。そしてもちろん、注意深く狙いを定めたほうが、目標を当たる確率も高くなる。撃つことよりも、敵を仕留めるほうが大事、というわけだ。

  抜粋冒頭の言葉は至極名言ですね!力まずに素早い動作を行うには、その動作をゆっくりと、そしてスムーズにできるようになるまで繰り返すと再現性が高まるということでしょうか。

 

11:「スポーツ寿命の極限 ― 『修復』『取り替え』『若返り』」より

 僕が気づくかぎりでは、運動ができるのに、エクササイズの必要性を無視してドラッグなどに目がくらむ人はみな、考え方が後ろ向きだ。マラソンにエントリーしておいて、誰かに金を払って代わりに走ってもらうようなものだ。スポーツをする上で大切なのが勝つことでないのと同じように、生きることで大切なのは生き残ることではない。科学や医学が我々の身体のダメージを修復して、関節や筋肉を若返らせて、かつての自分に戻してくれるという考え方には、たしかにとてもワクワクさせられる。そして、エクササイズが、これまで見出されたなかで最も有効なアンチエイジングの療法であるという事実は、まるで絵に描いたような正義だ。エクササイズ ― 真夜中に我を忘れて踊るにしろ、朝の6時にがんばって汗をかくにしろ ― は、もうすでにそれだけで楽しい喜びであることは明白なのだから、素晴らしい

  熟年ランナーの思いを代弁しているようです!昨今、世界的にランナーが増加しているのは、最初は健康維持のために走りはじめたのに、そのうち走ること自体に喜びを見出していく人が多い(自分も)からだろうと容易に想像できますね!

 

 

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