ランニング フォーム 改善! 骨盤 肩甲骨 姿勢 習慣 など

ランニングフォームの改善に役立つ教本や関連本を紹介、フォームを進化させて走力を上げましょう!

マラソン読み物 「君ならできる」 小出義雄 著、「風になった日」 高橋尚子 著

東京2020前に名監督と名選手の物語を双方の視点から振り返る!

 ご存知、Qちゃんのシドニー五輪での金メダル達成までの物語です。20年近く前の物語ですが、結果はわかってはいるものの、とても感動的な内容で、さらに東京2020も近づいてきたこともあるので今更ながら紹介しちゃいます!
 しかもQちゃん本人と小出監督(ご存知の方も多いと思いますが、小出義雄氏は今年2019年4月にお亡くなりになりました、享年80歳。)の著書の2冊。
 読む順番はまず小出監督の「君ならできる」からです。というのは、こっちは内容がシドニーオリンピック前までの金メダルを期待するというところで終わっているからです(あと書きの日付が2000年9月18日、シドニーオリンピックの女子マラソンが9月24日なので直前!)。対してQちゃんの「風になった日」は金メダルを取ったあとの出版で、最初の書き出しがシドニーオリンピックでのレースの模様となっています。ので、連続して読むと異なる視点からの臨場感満載です!
 それにしてもQちゃんがシドニーオリンピックの4年前まで中距離の選手で、小出監督の勧めでマラソンに切り替えたことなんて知らなかったですし、そこから金メダルを目指して猛練習して実際に優勝するなんてQちゃん本人はもちろんのこと、見出して指導した小出監督ってすごいです!ということが2冊の本から伝わってきます。
 また、皆さんは高橋尚子さんが何でQちゃんって愛称で呼ばれているかご存知でしたか?小出監督の指導を熱望して入社したリクルート陸上部での新人歓迎会で「オバケのQ太郎」を余興で披露したことからついたのですが、その過程も2冊ともに違う視点で書いてあり、とても微笑ましいです!

 

 それでは、今回は教本ではないですが、いくつか興味深いところを抜粋します。まずは小出監督の著書「君ならできる」からです。

「『せっかく』という感謝の心」より

 高橋がけがをしたり、風邪をひいて焦っているときには、
 「悔しいかもしれないが、そうじゃない。もしも土壇場で風邪をひいてけがなんかしたら、スタートラインにつけない。いま、『せっかく』ここで風邪をひかせてくれた、ありがたく休めということなんだ」
 そういってやる。
 せっかく転んでケガをした。せっかく食中毒を起こした。「せっかく」と思うところから、別の見方が生まれてくる。いまここで頑張りすぎたら、骨折なんかしてスタートラインにつけない。オリンピックに行けなかった。
 だから、ここでお腹が痛くなった。「せっかく」お腹が痛くなったのだ。ありがたい。そんなふうに理解しておけ、と。「せっかく」という言葉を覚えておきなさい。・・・
 「せっかくこうしてくれた、感謝、感謝」
 そう思う心が大切なのだ。

 ポジティブシンキングに持っていくのがうまいですよね、さすが名監督です! 人から聞いた仏教の教えとのことですが、それをうまく指導に使えるところがすごいです。


「強運も努力があって初めて生きる」より

有森にはほかの選手にはない強運が確かにある。たとえば彼女が候補選手に挙がってくると、有力な選手がケガをして走れなくなったりするのである。
 本当に不思議なことだ。だから私は、運というものは確かにあるのだと思う。
「もともと強運を持っている」となると、何の努力をしなくても、最初から勝者になることが決まっているかのように思われるかもしれない。だが、決してそんなことはない。
 ひたむきな努力をしたり、我慢したりすることによって、運がよくなるのである。努力を積み重ねることによって、もともと持っていた運が少しずつ形となって現れてくるのだと思う。

 「運が形となって現れる」っておもしろい表現ですよね。努力を継続することによって運が開けると思うと何につけても努力のし甲斐があります!

 

「オリンピック選考の光と影」より

 私の個人的な、もう一つの選考プランはこうだ。
 まずは、「ヨーイ、ドン」で全員で一発勝負をやる。オリンピック当日も一発勝負である。調整も含めて、一発でベストを出せる選手でなければ意味がないからだ。それでも、本当に強いランナーを選ぶのに、一発勝負だけでは怖いという人もいるかも知れない。
 ならば、候補を三十人挙げて、三十キロなら三十キロ、オリンピックの近くになって、もう一度同じメンバーでレースをやらせればいい。前回の結果を参考にしながら上位にきた人から順番に選べばいいのだ。
 これならば、誰がいちばん強いか分かるだろう。
 オリンピックの選考は、なによりも「スポーツマンシップ」に則ってやってもらいたいと思っている。

 何と、20年近くまえから小出監督はMGCのような選考プランを推していたんですね!ちなみにもう一つの選考プランとは「国民投票」です。

 

「私の次の夢『銀座マラソン』の開催」より

 私は、陸連の幹部に「一年に一回でいいから、銀座のど真ん中で、世界のどこにも負けないようなマラソン大会を開催してくれ」と懇願しつづけている。
 全国各地で大きなマラソン大会が行われているのだから、年に一度ぐらい、東京・銀座のど真ん中でマラソンをやってもいいのではないだろうか。
 十万人が参加するとしらた、東京に莫大なお金が落ちることは確実だ。参加料だけでも相当な額になるから、その半分をチャリティにしたらいい。
 ・・・
 しかし、残念ながら、いままでのところ、一向に実現するきざしは見えてこない。どうやら警視庁が道路の使用を許可しないようなのだ。
 石原都知事の英断で、何とか実現してもらえないだろうかと思っている。
・・・
 参加する人も、沿道で応援する人も、テレビで中継を見る人も、みんながマラソンを心ゆくまで楽しむ。考えただけでも、胸がわくわくしてくる。
 一日も早く実現することを、夢見ている。

これも驚きです、小出監督が東京マラソンの提唱者だったのですね! この本の初版が2000年ということは、それ以前から提唱していたということでしょう。そして第1回目の東京マラソンは「東京マラソン2007」ですから、多分実現するまでに10年近くかかったのでしょうか⁈

 

次にQちゃんの著書「風になった日」からです。

 

「小出マジック」より

 監督の指導法の素晴らしさは、何よりも「やる気」にさせてくれることだ。
 ・・・監督の場合は、さらに視線をグッと下げて対等に話してくださる。上から押さえつける指導ではない。監督という権威を感じさせないのだ。
 ・・・
 「とてもできないよ」
 と反発したくなるときでも、監督はニコッと笑顔をみせて、こうつづける。
 「高橋、これやったらすごいぞ、おまえ。また強くなっちゃうなぁ」
 また強くなる……その一言は、疲れた身体のカンフル剤になるのだ。
 「これやったら、目標の階段を一歩上れるぞ。いや、二段くらい飛び越しちゃうかも」
 「今日の練習が大切なんだ。今日やるかやらないかで、すごい違ってくるぞ」
 などと言われると、「そうか」と納得してしまう。
 「今日の練習で強くなるのか。じゃあ、やらなきゃ!」
 そんな気持ちにさせられてしまうのだ。
 練習は、確かにきつくて辛いものである。でも、私はきつい練習が嫌いではない。
 「これをやれば、強くなれるんだ」と思えば、きつい練習も好きになる。「辛い」と「嫌だ」は違うものなのだ。

 持論の押し付けではなく心理的にアプローチするのが上手だったんですね。やはり名監督です!

 

「代表のキップ」より

 泣きわめく私に、監督はこんな話をしてくれた。
 「いま、おまえは八合目まで山を登ってきたところだ。しかし、すごい吹雪になって前が見えなくなった。いったい、どうする? せっかくここまで登ってきたんだから、『絶対に登るんだ!』と言って、自分の達成感だけを重視して、無理矢理に登るのもいいだろう。しかし、途中にはどんな障害があるか分からない。たとえ頂上まで達することができたとしても、吹雪で景色は何も見えない。『やった』という独りよがりの達成感が残るだけだ」
 監督の声が、私の胸に少しずつ染み込んできていた。
 その声に、黙って耳を傾けた。
「今回はここまで登ってこれたんだからと満足し、いったん、山を下りるのもいいだろう。そして、もっと天気のいいときに、もっと高い山を登り、もっと素晴らしい景色を眺める。そういう考え方もある。おまえなら、どっちにする?

 ここでも命令調の押し付けではなく、分かりやすいたとえ話をして選択権を与えるといいう心理的に次につながるようなアプローチをしていたんですね、凄いです!

 

「『なにクソッ』と思って走る」より

・・・だが、ここで落としたら「ほら、最後までもたなかっただろう」と言われるに決まっている。
 そう言われるのは、絶対に嫌だったから、
 「クソッ!」
 と自分を奮い立たせて、最後まで飛ばした。「クソッ」と思って走ったのは、そのときが初めてだった。
 走り終わってみれば、結果は、それまでで、いちばんいいタイムだった。
 自分でも思いがけない出来事だった。
 「クソッ!」と思うだけで、力が出るものなんだなと実感したのだ。
 でも、ひょっとしたら、それも監督の「作戦」だったのかもしれない。

 逆にそれまで(社会人まで)「クソッ!」と思わないで走ったり練習してきたQちゃんもやはりすごいです!

 

「あとがき」より

 私は、そんな虹を目指してこれまで走りつづけてきたし、いつも気持ちのいい風に吹かれながら走ってきた。日本で試合をしたときも、アメリカで練習していたときも、シドニーで走ったときも、いつも風と一緒に走ってきたような気がする。
 オリンピックや金メダルのためではなく、風を切って走ることがただ気持ちよくて、いままで走りつづけてきたのだ。
 たぶん、それはこれからも変わることがない。
 「いまこの瞬間の、気持ちよさを大切にして走りたい」
 そう思いながら、走りつづけることだろう。

 私は、今日も、これから走りに出て行く。

 今日の風は、いったいどんな風だろう?

Qちゃんって本当に素直で爽やかな性格の人なんだなぁと改めて感じた締めの言葉です。「風と一緒に走る」と感じられるようになるまで走りつづけましょう!

 

君ならできる

 

風になった日