ランニング フォーム 改善! 骨盤 肩甲骨 姿勢 習慣 など

ランニングフォームの改善に役立つ教本や関連本を紹介、フォームを進化させて走力を上げましょう!

身体操作教本: 「怪我をしない体と心の使いかた」 小田伸午 小山田良治 本屋敷俊介 著

スポーツ科学教授、治療師(+競輪選手)の伝授する身体操作のコツ!

  

 タイトルに「怪我をしない・・・」とあるので、一般的な怪我防止のためのやってはいけない動作が図解されているのかな、と思ってしまいますが、否です。逆にこのように体を使えれば、また心を使えれば、怪我をしなくなるという内容です。ちなみにランニングフォームの本(怪我を誘発するフォームを矯正しようとかの本)ではありません。しかし、ランニングフォーム改善にはとっても役に立つ内容がてんこ盛りと言ってよいでしょう。
 本編(序章~第3章)は、スポーツ科学教授である小田伸午氏が豊富な図解とともに身体操作のコツと心の使いかた(精神的側面)を詳しく説明しています。パーツごとにトップアスリートの動作を例に解説しています。それにしてもイチローはこういう身体操作の本には必ずといっていいほど登場しますね。ちなみにマラソン選手は登場しません。野球、サッカー、バレーボール、水泳、競輪のトップアスリートが主に登場します。陸上競技ではウサイン・ボルトサニブラウンが少し登場しますが。また宮本武蔵五輪書も所々で登場します。剣道での足さばきや身体操作は、やはり昔から研ぎ澄まされていて、徹底的に無駄な動作を省いたものなのだと感じることができます。

 

 さて、序章では怪我を誘発する意識の使いかたが説明されています。なるほど、よくある、故障しない体の使いかたなどで紹介されている注意点などに意識を持って行ってもうまく機能しないことが分かります。

 

 序章 

「なんとかしよう」にご用心ー心の力みは体の力み

体の一点に対して、なんとかしようという気持ちが強くなるのは、その気持ちのままでやってもうまくいかないというサイン。うまくいかないから、なんとかしようと意識してこだわる。こだわるから、力んだり、全体のバランスが崩れたりして、結局ほかの欠点が生じてしまいうまくいかない。堂々巡りです。
・・・うまくいくときには、どこにも意識を置かずに、動作に力感が無く、よどみなくさっと流れていくものです。つまり意識を置く(気にする)ということは要注意です。

 

怪我はビッグチャンスである

怪我とは怪しい我(自分)と書きます。昔から、人が怪我をする原因は自分にあると考えられてきたのでしょう。・・・怪我につながる「怪しさ」を持っている人が怪我をする(=怪我の原因は自分である)。
・・・怪我の問題を考えることは、人間の体を知り、自分の制御の仕方を学び、自分の行く末をも変えるきっかけになる、ビッグチャンスなのです。

 

  第1章からパーツごとに解説されます。まずは上部である腕周りからです。特に上腕の外旋と肩の緊張の関係は大変勉強になりました。自分は自転車によく乗る(自転車通勤)なのですが、T字ハンドルに手を置くときに、最初は親指をハンドルの下に当てているのですが(その方がブレーキングはしやすい)、安定してくると親指をハンドルの上に持っていきます。その方が姿勢が楽だからで、自然に起きた身体操作でした。その身体操作が上腕の内旋から外旋に持っていく身体操作で、その結果、肩甲骨が下がり僧帽筋の緊張か解けて楽な姿勢になるということを、この章を読んで理解できました!

 

 第1章:常識を疑うことから始めましょうー手指、腕、肩、首

不器用な薬指は、はたして必要か?

前腕の回内、回外の軸は、薬指。
・・・単独で動かすには不器用だからこそ、指や腕全体の軸となってほかの指や腕の動きを助けてくれます。

 

肩肘を張らずに生きましょう

 「肩肘を張る」という言いかたがありますが、これは僧帽筋を緊張させ、肩をつり挙げる体使いを言い表しています。肩肘が張って脇が開いている状態になっています。それに対して肩が下がった状態は「上腕が外旋している」と言います。肩がつり挙がったときにくらべて上腕骨が外向きに回旋した状態になっています。上腕の内旋状態は僧帽筋を緊張させやすく、肩をつり挙げます。

 

一流選手は、無意識に力みを外す動作に到達する

・・・顎を引くと、胸鎖乳突筋が緊張しやすくなります。胸鎖乳突筋をゆるめるには、むしろ顎をやや出す感覚が大切です。顎を出すとは、フェース角度をやや挙げて、下顎を前に出す感覚です。
・・・つまり顎には鎖骨(腕の本当の付け根)をゆるめる作用だけではなく、運動の方向を指し示し、その方向に体重移動をするときの推進役を担う作用もあるものを思われます。

 

 第2章は、下半身の身体操作のコツです。脚の付け根の話は他の身体操作の本(みやすのんき氏シリーズ)でも紹介されていますが、目のもっていき方とその意識が身体操作に影響することは新たな収穫でした!

 

第2章:体も、心も、力を抜く勇気を持てー股関節、脚、腰、膝

股関節の場所は、コマネチではない

 

股関節は英語で hip joint 、股関節は、お尻の側面の中にある。「気をつけ」をしたときに、手のひらがお尻(骨盤)の側面にあたりますが、そこに股関節があります。

 

掃除機のかけかたも、ウサイン・ボルトの走りかたも、外旋が正解

(掃除機をかける)おすすめの足使いは、後ろの足を「やや外に向ける」です。床を後方に押す(床からの反力を得る)後ろ足は外を向いて、前に踏み出す足はまっすぐに前に向けて押す方向の舵取りをする。これが、体の構造(股関節の構造)に沿った自然な体使いです。力感のない、楽な体の使いかたとも言えます。歩くときも、地面をとらえて体を前に押し出す支持足はわずかに外を向いているのが自然です。

・・・走るときも、地面を押すほうの脚(支持脚)の股関節は外旋です。・・・(ウサイン・ボルトも)膝頭と足先が外を向いています。まっすぐ前を向くのは空中にある足(遊脚)のほうです。空中にある足の膝頭は進行方向か、やや内側を向くのが自然です。

 

 人間にもしっぽがある

人間には尾骨、すなわちしっぽがあるのをご存知ですか? しっぽを真下に向ける感覚、それが骨盤をニュートラルに立てる感覚です。しっぽを水平に向ける感覚が、骨盤を前に向ける感覚です。しっぽが真下より前に向く感覚、これが骨盤を後ろに倒す感覚です。

 

立ちかたには前進型と後進型がある

体全体の重心点は、立位姿勢の場合、体幹のおへそあたりにあります。踵やつま先にあるのは重心点ではなく、支持点(荷重点)です。・・・体が前に進むか、後ろに進むかは、重心点と支持点の前後のずれ、つまり静的安定の崩れによって決まるのです。静的安定を崩すことで、動に入ります。

 

膝を抜くときは、遠くの山を見るようにー”見の目”と”観の目”

膝が抜けるかどうかという体使いには、心理状態が大きな影響を与えます。
・・・剣道の世界では、”遠山の目付”ということがあります。遠くの山を見るようにして、近くの相手を見るからです。宮本武蔵の「五輪書」には、”見の目を弱くして、観の目を強く”とあります。見の目とは焦点を当ててみる目です。観の目とは、遠くの山を見るようにして、近くの相手を見る目です。目は心の持ち方に結びつきます。心の持ちかたが目の付けかたに現れるとも言えますし目の付けかたが心の持ちかたに影響を与えるとも言えます。目は心であり、心は目でもあります。

 

地球と一体になる感覚ー意識を外す

心の使いかたでもう一つ述べておきたいことがあります。それは、腕や脚の筋肉に直接意識を置かないことです。動作に使う筋肉に直接意識を置く心の使いかたには、膝を抜いて床反力を呼び込む体の使いかたを阻害するのです。
・・・主動筋に意識を置くと、地面と自分とは切り離されます。遠山の目になれば、地面と自分は一体になります。・・・地面と自分の足がつながる感覚、すなわち地球と一体になる感覚が生じます。
・・・意識を自分の体の外に出して、相手との接触に直接意識を置かないことです。

 

神経や筋肉の働きが、人間社会のお手本となる

見の目から観の目に自分が変わると、同じ回数を挙げるのが楽になりますし、最大挙上重量も上がります。心理現象が変わると、物理現象が変わるのです。一つの筋に負荷を多くかけている様は、集団やチームの中で一人の人間だけに責任が集中し、悲鳴を上げているような孤軍奮闘の人間組織を思わせます。それに対して、個人やグループ同士が互いに助け合い、他の組織の力をも味方につけて物事を推進していく人間組織は、観の目でつながった組織と言えるでしょう。

 

 最終章は、有名競輪選手2名が座談会形式で身体感覚について語っています。大学教授の理論的な説明とは違った、トップアスリートの感覚的な表現も非常に勉強になります! もちろん、それを引き出す聞き手の小田伸午氏がいるのですが。

 座談会:山内卓也 × 浅井康太

  •  やっぱり体の動きとか姿勢っていうのは、私生活で崩れることが多いですよ。・・・私生活で変な体勢をとったりすることによって引き起こされる。毎日の日常生活で、自分の体の動きを感じていて、そう思うようになってきました。
  • トイレに座って、サドルに座ったときの動きをしますね。確認してから、「よしっ」って立ち上がる。座るときと、立ち上がる瞬間の角度でやっぱり腹も使うし。
  • 僕は、踏みに行く側と反対に体を持っていくんです。踏むと言っても、顔と首の平行移動をするだけで、体って前に行くじゃないですか。その勢いを使って、丸太の上に立った状態で丸太を転がすような感じで、水平方向に入力して、足が前に行ったぶん足はついてくるから、勝手に踏み足になっているんですよね。ヨイショと上から下に踏もうとして踏んでいない。入力方向は丸太転がしのように水平です。
  • お腹、下腹をへこませると内臓を圧迫して大切な腸腰筋の働きを妨げてしまうんじゃないかと思うんです。だから、下腹は、締めるんじゃなくて膨らませる。それもただ膨らませるじゃなくて、僕の中では、体幹が土管のイメージなんですよ。土管みたいに体幹の中を空洞にして、その空洞を広く膨らませて、周囲の部分は土管の縁の部分のように硬く締める。そうすると中はゆったりしているから、内臓が大腰筋の動きを邪魔しない。
  • 軸という感覚はあります。でも固めていないですけど。軸っていうか、「点」かな。「点」に近いな。ーどこにある点?胸椎と腰椎の境目ぐらい、大腰筋の付け根ですかね。ここから脚が出てるようなイメージなんです。で、胸椎は側屈と回旋で動くし、腰椎は前傾で動くじゃないですか。だから、胸椎と腰椎の動きが合わされるところなんで、立体的に動きますよね。・・・そのときに、腰椎の向きを変えることによって、仙骨の向きが変わってきますよね。・・・おしりの穴を後ろに向けるような感じでいくと、より前に進むんで。そこが合わさると、玉(点)みたいなのが立体的に動く、みたいな感覚があります。
  • ーみぞおちの付け根くらいが大腰筋の付け根なのかなあ?はい。だから胸から踏むような感じですね、僕は。そこから脚が出てる。股関節を「つ」の字じゃなくて「く」の字に折りたたむのを腹筋が邪魔しないように。「つ」の字になるともう大腿四頭筋の動きになるから股関節が動かなくなるんです。「く」の字に折りたためるのは股関節しかないじゃないですか。腰椎で、腰の骨で曲げようとするんじゃなくて、股関節で折りたたむ。腰の骨で曲げようとすると大腿骨の骨頭がうまくスッと上がらない。上げるのを邪魔するのが四頭筋なんで。・・・だから大腿四頭筋の力を抜く、抜きながら上げてくるっていう感覚ですかね、僕は。股関節で「く」の字に折りたたむといっても、腰をぐっと反らすわけじゃない。
  • この姿勢(くの字)に入ってきたら勝手に腹圧が入ってくるんで。そうですね、”腹がすわる”っていうか…。腹圧は、外から内に押し込める圧じゃなくて、内から外へ突き上げる圧ですね。
  • 一般の人は、ペダルを上から下に踏むと思っています。でも踏むときには、ハンドルは引くんじゃなくて押すんです。一般の人は「踏む」と「引く」がワンセットになっています。そういう体の使いかただと、大腿四頭筋で踏んじゃうんですけど、大腿四頭筋で踏むと股関節に内旋がかかってしまう。それだと脚に対して腹が当たらない。それがしっかり入ってくるようになると、上がってきた脚に対して腹が当たりますよね。

  腹圧と大腿四頭筋の関係は、みやすのんき氏の本でも少し触れられていた覚えがありますが、今回の身体感覚の表現はすごくわかりやすく伝わってきます。
 全編通して直接的にランニングフォームに述べられているのは、ほんの一部(脚の外旋)ですが、他の身体操作のコツもきっとランニングに直接的・間接的にとても参考になるし有益だと思います!

 

トップアスリートに伝授した 怪我をしない体と心の使いかた